燻製をレシピ通りに作ってもうまくいかない理由|燻製の失敗を考える #01
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燻製を始めた人の多くが、同じ壁にぶつかります。
レシピ通りに作った。
温度も時間も守った。
見た目も、いかにも燻製らしい。
それなのに──
なぜか美味しくない。
酸味がキツい。
エグ味が残る。
「自分のやり方が悪いのか」
「燻製は難しいものなのか」
そう感じてしまう人も少なくありません。
ですが、最初に結論だけ言ってしまうと、それはレシピ通りに作った事が原因である可能性が高いです。
燻製の味を決めている「燻煙」の問題
もちろん、レシピそのものを否定している訳ではありません。
実際、美味しく作れるのだと思います。
しかし多くの燻製レシピは、次のような書き方をしています。
・温燻:70℃で2時間
・冷燻:25℃以下で2時間
・チップはサクラを使用
確かに、この通りで異論を挟む余地はない。
ですが、お気付きの通り、本当に知りたい重要な情報が抜け落ちています。
燻製の風味を決めているのは、温度や時間そのものではなく「煙」です。
・どれくらいの量の煙か
・どんな質の煙か
・どんな当たり方をしているか
この3つが、味を大きく左右します。
ところが、多くのレシピでは煙そのものについて、ほとんど語られていません。
チップの量と煙の量が語られない理由
親切なレシピになると、このくらいの記載があったりはします。
・チップは一握り
・適量を入れる
・煙が出たら食材を入れる
ですが、一握りとは何グラムなのか。
その量で、どれくらいの煙が出るのか。
どの程度を「適量」と呼ぶのか。
ここは、ほぼ説明されません。
理由は単純で、煙は数値化しにくく、環境差が大きすぎるからです。
同じチップ、同じ量でも、
・湿度
・温度
・熱源
・燻製器
が違えば、煙の出方は変わります。
結果として、「各自の感覚で調整してください」という領域になってしまうからです。
「煙の当て方」がわからない問題
もう一つ、重要な点があります。
多くのレシピでは、煙は“当て続けるもの”として扱われています。
ですが実際には、
・出始めの煙
・落ち着いた煙
・白煙なのか、薄い青煙なのか
で、性格は大きく異なりますし、煙は、
・立ち上がり
・滞留
・抜け
によって、香りの乗り方が変わります。
時間=香りの量ではありません。
それにも関わらず、「何分燻すか」だけが強調される。
ここに、失敗の種があります。
なぜ煙はコントロールしにくいのか?
レシピ通り、2時間燻して失敗してしまうもう一つの理由は環境です。
煙は、次の要素に強く依存します。
・燻製器の構造
・燻製器のサイズ
・燻製器の素材
・熱源の種類
レシピを公開してくれているベテランにもなると、自作で大型の燻製器を作っていたりと環境が大きく異なる場合も多く、そもそもの前提条件が違うわけです。
燻製器の「サイズ」が違うと何が起きるか
燻製器のサイズが違うと、同じチップ量でも結果は変わります。
・容積が小さい
→ 煙の密度が高くなる
・天井が近い
→ 煙が食材に直接当たりやすい
・煙の逃げ場が少ない
→ 滞留しやすい
つまり、レシピに書かれている「一握り」は、燻製器のサイズによっては調整することが必要になります。
燻製器の「素材」が煙に与える影響
素材の違いも、煙の出方と味に影響します。
例えば、
・木製の燻製器
→ 内壁が煙を吸着しやすい
→ 煙の荒い成分が和らぎやすい
・金属製の燻製器
→ 吸着が少ない
→ 煙の影響がダイレクトに出やすい
どちらが良い・悪いという話ではありません。
同じ煙量でも、味の出方が変わるという事実があります。
熱源の違いも「煙の質」を変える
さらに、熱源も無視できません。
・ガス火
→ 立ち上がりが急
→ 白煙が出やすい
・電熱ヒーター
→ 立ち上がりが緩やか
→ 煙が安定しやすい
温度計の数字が同じでも、煙の性格は変わります。
レシピ通りにやるほど失敗しやすくなる
ここまで整理すると、少し皮肉な構図が見えてきます。
・レシピでは温度・時間が明確に記載されているから守る。
・しかし、煙の量・煙の質・煙の当たり方は環境によって変わってしまう
その結果、真面目に守るほど、煙だけが過剰になってしまう可能性が高くなるわけです。
ここまでの整理
レシピ通りに作る燻製がうまくいかない理由をまとめると、
・煙の話が共有されていない
・燻製器のサイズ・素材が前提に含まれていない
・熱源差も考慮されていない
にも関わらず、仕方のないことなのですが温度と時間だけの記載に留まっている。
つまり、前提条件が揃えられていないから失敗してしまうわけです。
次の記事:燻製器が燻煙に与える影響について
